技術アドバイザーとは?役割と選び方のポイント
市場の縮小に伴い、企業間の競争が激化する中、注目を集めているのが技術アドバイザーの存在です。他社との差別化は市場での競争を勝ち抜く上で大きなアドバンテージとなりますが、容易に達成できる目標ではありません。
そこで、組織の外部から技術の専門家をアドバイザーとして迎えることで、自社の課題解決や、自社の強みを生かした新規事業や新製品開発のサポートを受けることができます。
今回は、技術アドバイザーの役割や彼らを迎えるメリット、そして技術アドバイザーを選ぶ際にはどのようなポイントに注目すべきかについて解説します。
技術アドバイザーとは
技術アドバイザーは、技術部門における課題解決を目的として組織に迎え入れられる、専門家のような存在です。技術アドバイザーは技術顧問という名前でも親しまれており、技術的なスキルの高さを評価され、各社で活躍しています。
技術アドバイザーは社内エンジニアとは異なり、その業務の中心はあくまで課題解決に向けたアドバイスや、間接的なサポートに留まるケースが一般的です。人手が足りずに迎え入れるというよりも、「技術的な課題解決が進まない」「事業を育てたいが、頭打ち感が否めない」といった際に、テコ入れの一環として技術アドバイザーとの契約を検討することが多いでしょう。
自社にはないノウハウと経験を持っていることから、これまでにない新しい角度での問題解決を期待することができます。
技術アドバイザーの役割
技術アドバイザーの役割は、大きく分けて次の3つに分類されます。
技術開発・内製化のサポート
技術アドバイザーの主な役割の一つは、社内での技術開発における問題解決を促したり、新しい技術を持ち込み、それを内製化できるようにするための仕組みづくりをサポートしたりするものです。
どれだけ多くの人材を抱えていても、同じスキルを持つもの同士が募っている組織では、イノベーションの創造や高度な問題に出会ってしまった際、全員同じようなスキルセットしか持っていないために、その問題を乗り越えることができないこともあるものです。
外部から技術アドバイザーを招くことで、自社では得られなかった経験をアドバイザーが社内技術者に共有したり、その知見を活用してソリューションの検討を行ったりというサポートを受けられます。
また、技術アドバイザーがいなくなったとしても、自立して問題解決に取り組めるような環境へと育ててもらうことができます。
新規事業の創出支援
技術アドバイザーは、新規事業を創出する際にも頼りになる存在です。技術アドバイザーの知見から自社の強みを評価してもらい、強みにあった事業方針の策定や、強みを活かせるプロジェクトの提案を受けられるため、社内では生まれてこなかった、独創的なアイデアを得られます。
「他社との差別化を進めたいけれど、自社の強みがわからない」「自社の強みをどう活かせば良いのかがわからない」という悩みを抱えている企業にとって、強力なサービスを受けられるでしょう。
社内技術者へのアドバイス・育成
技術アドバイザーは、ただ意見やアイデアを提案するだけでなく、社内技術者のスキルアップに向けた助言やノウハウ共有も行います。社内アドバイザーと同等のスキルセットを有する高度人材の育成が進むため、自社で人材開発が進まないと悩んでいる場合にも検討したいところです。
単純な技術の共有に留まらず、技術アドバイザーは長年の経験からアドバイスを提供するため、教材を読んだり専門学校に通ったりすることからは得られない実践的な知見を社内に蓄積できます。
技術アドバイザーと契約するメリット
技術アドバイザーとの契約は、企業に多くのメリットを与えてくれます。ここでは、技術アドバイザーから得られる利点について解説します。
第三者の視点や意見を取り入れられる
技術アドバイザーを招く大きなメリットは、第三者の視点から意見を取り入れられるようになる点です。技術アドバイザーはあくまで外部顧問という位置づけであり、基本的に自社社員となるわけではありません。
そのため、自社の組織の都合に左右されることなく、客観的な立場から意見を提言するため、改善が必要な部分をキッパリと指摘したり、他社から見た自社の強みという視点で技術力を評価したりできます。
社内での話し合いばかりが続くと、人間関係へ配慮しながらプロジェクトを進めたり、他社と自社をフラットに比較しながら検討したりということが難しくなります。技術アドバイザーという外からの声を取り込むことで、フラットに自社を見つめ、改善のきっかけを得られます。
効率的な課題解決につながる
外部からの声を届ける技術アドバイザーは、社内の課題解決にもフラットに取り組み、自身のスキルと経験から効率の良いソリューションを提案できます。
社内の問題を社内の人員だけで解消しようとすると、有効な解決方法がわからず正解に辿り着くまでに時間がかかってしまうという問題を抱える場合があります。
技術アドバイザーの知見を頼ることで、彼らの経験から最適なソリューションの提案を受け、それに従うことで最短での課題解決を実現可能です。
人材不足の解消につながる
技術アドバイザーによる建設的なアドバイスや技術ノウハウの提供は、社内の生産性向上に大きく貢献するため、長期的に見れば人材不足の解消につながります。
技術アドバイザーはあくまで特定領域の問題解決のための業務や、事業に対する提言にその業務範囲は留まりますが、そのノウハウが広く社内に共有されることで、社員一人ひとりの業務効率化に貢献します。
そのため、人手をかき集めなくとも少数精鋭で業務を進められたり、スムーズに業務のデジタル化を進め、生産的な業務環境の構築が実現したりします。
技術アドバイザーを招く際の注意点
技術アドバイザーは、うまく起用できれば非常に頼りになる存在ですが、技術アドバイザーであれば誰でも良いというわけではありません。ここでは、技術アドバイザーを招く上で注意しておきたいポイントについて解説します。
技術アドバイザーを雇えばあらゆる問題が解決するとは限らない
技術アドバイザーを雇うことは、課題解決にとって重要であっても、それだけですべての問題が解決するわけではありません。
技術アドバイザーの役割は、あくまですでに明らかになっている問題の解決のサポートであるため、問題発見のところから丸投げにすることは有効ではありません。
もちろん、技術アドバイザーの意見から問題が新たに発見できることもありますが、技術アドバイザーに相談するにあたって「とりあえず会社のよくないところを見つけて直してください」というスタンスでは、建設的な解決は難しいといえます。
技術アドバイザーを招く場合には、技術アドバイザーにどんな役割を担当してもらうのか、どんな課題解決を期待するのかなど、彼らの活躍をマネジメントできるよう体制を整えておくことが大切です。
自社で課題をあらかじめ整理しておく
技術アドバイザーは課題発見も業務の一環として担ってくれますが、そのすべてを一から担当してもらうのは効率的とはいえません。技術アドバイザーとはいっても、専門としている領域は人それぞれであるため、適材適所のアドバイザー起用が理想的です。
また、企業は課題を複数抱えていることも珍しくありませんが、自社で課題を認識した上で、どの課題を優先的に解消すべきか把握しておくべきでしょう。正しい順序で課題解決ができなければ、現場での改善効果も今ひとつということになりかねません。
自社にとって優先的に解決すべき課題を整理し、その上で最適な技術アドバイザーへの相談を検討しましょう。
雇用契約ではなく顧問契約であることに留意する
先ほども少し触れたように、技術アドバイザーを自社に招く際には雇用ではなく、顧問契約という形になります。そのため、厳密には正社員ではありません。
したがって、技術アドバイザーに任せられる業務もあくまで彼らの専門領域だけであり、自社のエンジニアの不足を補う存在として招くのは非効率です。必要な知見を得られた後、それでも人材不足に悩むようであれば、別途エンジニアを採用することが大切です。
また、自社の課題が人材不足である場合は、技術アドバイザーとは別にエンジニア採用を進める必要があります。この際、技術アドバイザーの知見を頼りにして採用の進め方や必要な人材などの助言を得るのも良いでしょう。
技術アドバイザー選びのポイント
自社に適した技術アドバイザーを招くためには、正しいアドバイザー選びのポイントを把握しておくことが大切です。ここでは、どのような点に注意して技術アドバイザーを選ぶべきなのかについて解説します。
技術アドバイザーとしての実績に注目する
技術アドバイザー選びにおいて大切なことの一つは、技術アドバイザーとしての実績です。
これまでどのような企業でアドバイザー経験を積んできたのか、どんな企業課題を解決してきたのかに注目することで、適切なスキルを持った技術アドバイザーを発掘できます。
また、アドバイザーとしての経験がなくとも優れたエンジニアリング実績を挙げている人物の場合、自社の課題内容によってはアドバイザーとして活躍できるケースもあります。自社の課題と人材の都合を踏まえて検討することが重要です。
技術力だけでなくマネジメント能力にも目を向ける
技術アドバイザーを探す場合、通常のエンジニア採用と大きく異なるのが、マネジメント能力の有無も確認しておくべきであることです。
通常のエンジニアの場合、これまでの開発経験や単純な技術スキル、最低限のコミュニケーション能力さえ満たしていれば、自社に迎え入れても問題ないケースがほとんどです。一方、技術アドバイザーは自社の課題にもよりますが、社内人材の育成や課題に応じた知見の共有といった業務が発生するため、単なる技術課題の解消だけでなく、組織を改善する必要があります。
その場合、技術アドバイザーは技術そのものではなく組織を構成する「人」と向き合うことも業務の一環となるため、組織経営やマネジメント経験の豊富な人物であれば、より安心してアドバイザーを依頼できるでしょう。
自社の課題やフェーズに適した技術アドバイザーを選ぶ
技術アドバイザーが対応できる業務は広い一方、課題解決は一つずつ取り組むのがセオリーです。課題を洗い出して一人の技術アドバイザーにそのすべてをぶつけるのではなく、優先すべき課題を一つピックアップし、それに適したアドバイザーを選定する、というプロセスを繰り返すのがベターです。
優先的に解決すべき課題は会社によって異なるだけでなく、自社のフェーズに応じても異なります。
技術アドバイザーは終身雇用ではなく、課題解決が終わったら契約を解消し、別のアドバイザーに相談することもできます。課題やフェーズに合わせて、技術アドバイザーをその都度選定することを念頭に置くと良いでしょう。
まとめ
技術アドバイザーの存在は、成長が頭打ちになっている製造系企業や、他社との差別化に悩んでいる企業にとって強力な助っ人となり得ます。
ただ、技術アドバイザーは万能な存在ではなく、明らかになっている課題に対して専門的に取り組む存在であるため、あらゆる問題を丸投げにするべきではありません。
技術アドバイザーごとに専門とする領域も異なるため、まずは自社でどんな課題を抱えていて、何から片付けるべきなのかを整理した上で、アドバイザーの起用を検討しましょう。
当社グロースウェル代表の大芝は、2015年にMBAを取得した後、自身のキャリアをエンジニアとして出発し、テクノロジーはもちろん、経営戦略の知見も融合した独自の業務課題の解決に注力してきました。大手IT企業にてプロジェクトマネジメントを務めた後は、ベンチャー企業での組織マネジメントやCTOとしてIPO(株式上場)を経験するなど、技術的な成功を企業にもたらしています。
グロースウェル創業後も、自身の知見を生かしたスタートアップ企業の技術アドバイザーや経営顧問を経験し、組織の課題解決とノウハウの蓄積を続けています。豊富なアドバイザーとしての知見と、技術課題の解決力を持った人物をお探しの際には、お気軽にグロースウェルまでお問合せください。