アドバイザリー契約の相場はいくらくらい?契約形態や報酬相場を解説
事業における大きな意思決定を実行する際、リスクが小さくリターンの大きな選択肢を確実に選んでおきたいところです。その際に採用される機会が多いのがアドバイザリー契約です。
アドバイザリーからは、社内プロジェクトを有利に展開するためのアドバイスや手続きのサポートを得ることができます。今回は、アドバイザリー契約を締結するのにはどれくらいの相場を想定すべきなのか、その役割や業務内容を把握しながら確認しておきましょう。
アドバイザリー契約とは
アドバイザリー契約は、業務に関するアドバイスを提供してもらうため、外部のアドバイザリーと結ぶ業務委託契約のことをいいます。経営者への経営課題解消に向けた助言、部門マネージャーには財務など部門ごとの業務アドバイスなど、広い範囲で適切な助言を得られます。
アドバイザリー契約によってサービスを提供するのは、いずれも実務経験が豊かな人物です。経営幹部クラスの人材を外部から招き入れることで、客観性の高いアドバイスを受けられます。
仲介契約との違い
アドバイザリー契約と似たような契約形態に「仲介契約」があります。仲介契約は主にM&Aを実施する際に採用される契約方式で、売却側と買収側の仲立ちをするために行われます。
アドバイザリー契約を行いM&Aを進めていく場合、契約交渉や手続きは、売却側も買収側もアドバイザーの下で進められます。つまり、契約時には売却側と売却側のアドバイザー、買収側と買収側のアドバイザーという4社間での手続きが求められます。
コンサルティング契約との違い
アドバイザリー契約と近しい契約形態としてポピュラーなのが「コンサルティング契約」です。コンサルティングは、主に組織が抱えている特定の課題に対してソリューションを提供するための業務です。
コンサルティングでは、さらなる成長に向けた企業収益の改善方法を具体的に実現するアプローチを検討する一方、アドバイザリーにおいてはより広範な、持続的成長を促すための経営基盤の確立について検討するといったような違いが見られます。
前者は比較的短期のプロジェクトであり、専門性の高いノウハウがコンサルタントに求められます。一方で、アドバイザリーは自身の経験を活かしたより戦略的で俯瞰的な知見をクライアントに提供します。
コンサルタントとアドバイザリーのどちらに依頼するかについては、今自社が抱えている問題や、経営者が懸念している課題意識と照らし合わせながら検討することが大切です。
アドバイザリー契約を検討すべきタイミング
コンサルティングではなく、アドバイザリーを依頼すべきタイミングはどのような時期に訪れるのでしょうか?ここで、アドバイザリー契約を検討すべき適切なタイミングについて解説します。
磐石な成長基盤を確立したい時
アドバイザリーの活躍が期待できる1つ目のタイミングは、確固たる成長基盤を確立したいときです。
特定の事業が右肩上がりの成長を迎えた場合でも、来年、再来年とその成長が維持できるとは限りません。コンスタントに事業の成長、あるいは新規ビジネスの創出を実現するためには、より高度な戦略基盤の確立が必要になります。
アドバイザリーを迎えることによって、特定の事業をさらなる成功へ導くだけでなく、自社の強みをどのように活かせばさらなる成長基盤を得られるかといったことを相談できるようになります。
目下のプロジェクトの遂行で自社社員が手一杯の場合でも、経営者はアドバイザリーと意見交換を重ねることで、次のステップの足がかりを得られます。社員に先駆けて次なる一手を検討し、成長のチャンスを早いうちから掴むことができるでしょう。
社外の意見を積極的に採用したい時
社内だけで経営判断を繰り返していると、マンネリや社内調整に追われてしまい、目下のリスクは小さいけれど、成長が期待できず持続可能性が失われていくといった問題と向き合う必要が出てきます。
アドバイザリーを招聘することで、経営者とフラットな立場から客観性のある提言が受けられたり、長期的な視点から潜在的なリスクの指摘を受けられたりできるようになります。目下の問題に気を取られていては気がつけないような重要な項目を見逃してしまうのを回避しやすくなります。
成長に向けた経営方針を見直したい時
現状事業は上手くいっているものの、その次の成長ビジョンが見えない、あるいはこれから起こり得るリスクについては理解しているけれどそれをどう回避すれば良いかがわからないという場合にも、アドバイザリーが活躍します。
アドバイザリーが対応できる業務範囲は広く、企業のおおまかな方針を策定するようなレベルから助言を得ることが可能です。経営方針について漠然とした悩みを抱えている場合も、アドバイザリーの出番といえます。
アドバイザリー契約をすることで得られるメリット
アドバイザリー契約を締結することによって、契約企業は多様なメリットを期待できます。では、どのような効果が得られるのか確認しておきましょう。
企業の利益を最大限追求できる
アドバイザリー契約を締結する大きなメリットは、自社の利益を最大化し、さらなる成長へと導くことのできる点です。
コンサルティングに比べて、アドバイザリーは問題解決の軸を広く提供することに主眼を置いています。短期的な利益を追求する上では、コンサルティングの利用が適切ですが、目下で推進力を獲得したい具体的なプロジェクトがない場合、アドバイザリー活用が適切だといえます。
アドバイザリー契約を結ぶことで、これまで認知していなかった自社で抱える潜在的なリスクの発見につなげたり、さらなるビジネスチャンスのきっかけを掴んだりすることもできます。漠然とした不安を解消する上では、アドバイザリーの利用をおすすめします。
客観性のある意思決定を実現できる
アドバイザリー契約を結ぶことで、自社とは距離を置いた人物から適切なアドバイスを受けられるようになります。
意思決定を一人の経営者だけで実践していると、どうしても主観的なものの見方に囚われてしまい、問題解決を合理的に進めることが難しい局面も出てきます。一方で、複数人の意思決定者が在籍している場合でも、社内の都合を調整しながら経営施策を決定しなければならないため、意思決定のスピードが低下し、合理的でない選択を迫られることもあります。
そこで、アドバイザリー契約によって外部から経験豊富なアドバイザーを招聘することで、客観的な知見と提案を受けられるようになります。意思決定者に近い立場からアドバイスを受けられるため、強い影響力を経営判断にもたらすことができます。
アドバイザリー契約の形態
アドバイザリー契約を締結する場合、主に「専任契約」と「非専任契約」の2種類の契約形態が存在します。それぞれの特徴やメリットについて解説していきます。
専任契約
専任契約は、契約するアドバイザリー企業を1社に限定して契約するものです。契約期間中は、他のアドバイザリー企業との契約はできないため注意が必要です。
専任契約は柔軟にアドバイザーを切り替えられないことがリスクとなりやすいものの、内部情報が漏れにくくなるというメリットが期待できます。M&Aなど、アドバイザリーを通じて取り組みたいプロジェクトが外部に明らかにしたくないものである場合、専任での契約がベターだといえます。
非専任契約
非専任契約は、アドバイザーが複数のクライアント会社と契約を結び、そのうちの一社としてアドバイスを受けられる契約です。月に数回の面談や、リモートでのアドバイスなど、アドバイザリーを必要としている場合はコンサルタントほど積極的なコミットが求められるわけではないため、専任契約を結ばなければならないケースは少ないものです。
M&Aのような秘匿性が高い現場においては専任契約が必要にもなりますが、経営戦略へのアドバイスや部門別の業務アドバイスなどにおいては、非専任で契約を結ぶことが一般的です。
アドバイザリー契約する際の主な内容
アドバイザリー契約において締結される契約内容については、以下の要素が主に含まれています。どのような点が契約範囲となるのか、あらかじめ確認しておきましょう。
契約を締結する対象企業
アドバイザリー契約を締結する際、その対象企業は契約書内に明記されます。基本的に契約締結はアドバイザリーとクライアントの2社で行いますが、場合によっては3社以上が絡む契約となるケースもあります。
子会社を所有している場合など、たとえ便宜上別個の会社であっても、アドバイスを依頼したい会社が複数またがる場合には、契約締結の際に対象企業として含めておくことが大切です。
業務範囲
アドバイザリー契約においては、具体的な業務範囲も定義づけられます。会社が問題を抱えている、あるいはアドバイザーを必要としている要件に応じて、どのような問題に対してアドバイザリーを提供するのか、契約締結の際に決められることとなります。
どのような問題に対処するかが決まった後、資料作成やリサーチ、買い手企業との交渉など、具体的にどのような業務に加担するか決められます。業務範囲を規定することで、契約締結後のトラブルを回避できます。
資料の提供
企業課題の解決を円滑に進めるためには、クライアント企業もできる限りの情報提供に努めることが理想的です。必要に応じて適切な情報共有を求める反面、アドバイザリー会社は取得した情報に対する守秘義務が発生します。
クライアントから受けた情報は業務以外に使用しないこと、適切な管理を行い、他社に漏れ出てしまうようなことがないよう確約します。
業務費用の負担
アドバイザリー業務において発生する費用は、どちらが、どのようなシーンで、どれくらいまで負担するのかを契約締結時にまとめておきます。基本的にはアドバイザリー契約を依頼する企業が支払うことになっていますが、法的拘束力はないため、あらかじめ契約書に要項を盛り込んでおくことが必要です。
報酬
クライアント企業がアドバイザリーに対してどれくらいの報酬を払うのか、明確に定義します。どのような報酬の支払いが発生するかについては詳しく後述しますが、着手金やコンサルティング料金、成功報酬など、契約締結後はさまざまな支払い業務が発生します。
金銭のトラブルを回避するためにも、あらかじめ丁寧に確認および交渉することが大切です。
秘密保持
企業の内部情報はもちろん、アドバイザリー契約が結ばれ、企業の動向そのものも秘密保持が義務付けられることがあります。第三者への情報開示や漏洩をどの程度まで禁止するのか、契約を結ぶごとに規定します。
アドバイザリー契約で発生する主な費用と相場感
アドバイザリー契約を締結する際、気になってくるのが具体的な費用や相場でしょう。どんな料金が発生し、具体的にいくらくらいになるのか確認しておきましょう。
着手金
最初に発生するのが着手金です。アドバイザリーに業務を依頼する際に支払う手数料で、数十万円から数百万円と、依頼する業務の規模や会社によってその金額は大きく異なります。
また、アドバイザリーによってはそもそも着手金が発生しないこともあります。具体的な費用を知りたい場合には、実際に相談して見積もりを出してもらうと良いでしょう。
中間報酬
中間報酬は、相手企業との基本合意が得られた場合など、一定の成果があった際やマイルストーンに到達した際に支払われる報酬です。成功報酬の一部として支払われるという考え方で採用されているケースが多く、成功報酬の10%程度が支払われることが多いといえます。
成功報酬
成功報酬は、契約時の目標を達成した際に発生する報酬です。M&Aのように、あらかじめ具体的な目標設定があった場合に支払われるケースが多いといえます。
月ごとの面談を長期的に依頼するといった顧問のような役割のアドバイザリーを求める場合、成功報酬ではなく月々の定額払いとなることが一般的です。
アドバイザリー契約を締結する際の確認ポイント
アドバイザリー契約を締結する際は、あらかじめどのような取り決めをアドバイザリーと行うのか、しっかりと確認しておくことが大切です。特に、専任契約をアドバイザリー会社と結ぶ場合は契約期間内に変更が効かなくなってしまうため、念入りにポイントを確認しましょう。
契約の内容
アドバイザリー契約を結ぶ際には、委託する業務や秘密保持の内容など、さまざまな確認項目が生じ得ます。契約内容に漏れがないか、あるいは想定していない契約条件が盛り込まれていないかなど、事前に確認しておきましょう。
報酬体系
アドバイザリー契約によって発生する報酬体系は、事業者によってさまざまです。着手金が発生する企業やしない企業、成功報酬が固定の企業や変動の企業など、あらかじめ知っておかなければ思わぬ落とし穴にはまってしまう可能性もあります。
アドバイザリーと契約しても、想定している利益を確保することができるかどうか計算しながら契約を進めましょう。
アドバイザリーとの相性
会社とアドバイザリーの相性の良し悪しも、アドバイザリー契約を結ぶ上では重視すべきポイントです。自社の領域における専門性の高さや、自社の提示する条件をクリアするため懸命に取り組んでくれそうかなど、契約締結前に把握できることが理想的です。
まとめ
アドバイザリー契約は、外部の専門家の力を借りることで、自社を客観的に評価し、経営戦略の刷新を効率良く進めてくれる頼りになる存在です。コンサルティングよりも広い視野で会社が抱える課題を解消したい、より確実で持続可能な成長基盤を構築したいという場合に活躍します
契約締結にはどれくらいの費用がかかるのか、アドバイザリーを依頼した場合でも適切な利益を得られるのかなどを事前に検討しながら依頼を進めましょう。
当社グロースウェルでは、IT監査をはじめ技術や経営面のアドバイスを担い、経営者・幹部向けコーチングや、事業立ち上げに携わってきた経験豊富なアドバイザリーがクライアントの課題解決に取り組みます。
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