【2023】エンジニア組織の作り方とは?組織づくりのポイントと注意点
IT需要の急速な高まりによって、組織におけるエンジニアの重要性は非常に高くなっています。エンジニアを外部から雇い入れることはもちろん、エンジニアを自社で育て、長く定着してもらえるような組織作りも必要です。
エンジニアという役職に就く人が主役となるITの時代において、エンジニア主体の組織を活性化し、企業を成長に導くためには、どのような組織作りを進めるべきなのでしょうか?
今回は、エンジニア組織の作り方について解説します。
エンジニアが退職してしまう主な理由
現在、ITエンジニアはデジタルトランスフォーメーション(DX)需要の高まりに伴い、多くの業界で引く手数多となり、人材不足が起こっています。しかし、それでもエンジニアが企業に長く定着できず組織を離れることになってしまうのには、次のような理由が挙げられます。
上司が嫌いだから・合わないから
エンジニアの離職率が下がらない主な理由として、上司との不和が挙げられます。
給与や業務には満足しているが、人間関係が上手くいかずに退職を選ぶ人は、エンジニアに限らず多くの職場で見受けられます。人間関係を原因に退職を選ぶ人が圧倒的に多く、エンジニア職も例外ではありません。
特に、上司との不和はエンジニアの退職の決定要因となります。現場エンジニアについての理解に乏しく、共感力の低い人物がエンジニアのマネジメントを担当することで、現場の声が反映されない就業環境に陥ってしまいやすくなるためです。
いわゆる頭の良さを端的に表す数値として「IQ」と呼ばれる概念がありますが、共感性に優れる心の知能指数を測る「EQ」と呼ばれる指標があります。上司との不和を理由に職場を離れるエンジニアが後を立たない場合、マネジメントを担う人材のEQを測定する仕組みを導入することで、共感性の高い優れたマネジメントが可能な人材の確保につながります。
能力が伸びないから
自社への興味や魅力を見出せず、他の会社へ転職してしまうエンジニアが増加している場合、自身の能力をもっと伸ばしたいというエンジニアのニーズに応えられていない可能性があります。
ITエンジニアは先進的な職業として注目を集めており、その需要の大きさから「よりチャレンジングな課題に取り組みたい」「自分の実力をさらに高められる環境に身を置きたい」というフロンティア精神の旺盛な人物が増えています。このような人物が、決まったルーティンワークや作業労働にしか従事できない職場環境が続くと、次第に業務への興味を失ってしまうのも無理はありません。
この問題を解消する上で肝心なことは、「ずっとこれが続くのか?」という疑問や不安を解消することにあります。
ここで鍵を握るのが、キャリアパスの可視化です。つまり、その企業に属していることで、エンジニアは今後どのような仕事に従事し、最終目的地としてどんな役職に到達し、プロジェクトを成し遂げるのかというプランを提示することが求められています。
業務上、たとえ一見変化のないルーティンワークが発生していても、それは一時的なものであることをエンジニアに示してあげる必要があります。具体的なキャリアパスが明らかになることで、エンジニアは将来についての不安や現場の不満を解消することができ、「ここでキャリアパスに則って働いていれば、確かな成果につながる」と考えられるようになります。
キャリアパスの可視化に合わせて、学習のロードマップを提案してあげることも有効です。「理想的なキャリアパスを歩む上では、このカリキュラムをこなしておいた方が良い」ということを示すことで、エンジニアのスキルアップとキャリアアップを両立できます。
給与が割りに合わないから
エンジニアが退職を検討する際、給与が見合ったものではないというケースは少なくありません。
ITエンジニアの需要が高まったことで、エンジニアの平均給与は年々高騰しています。他社や市場と比較して現在の給与が不相応であると判断した場合、早々に自社を立ち去ってしまうこともあるでしょう。
ここで重要なのは、エンジニアに適切な給与を支払っていない、あるいは適切に彼らの価値や果たしてきた業績を評価していないことにあります。IT需要が高まる前の基準でエンジニアたちを評価していると、今日のマーケット事情と乖離した給与を支払うことになってしまいかねません。
エンジニアに特化した評価制度がない場合は早急に整備し、評価制度が時代に合っていない場合はアップデートすることが必要です。
事業に飽きたから
エンジニアが会社を離れるシンプルな理由として、事業に飽きてしまったということもあります。「プロダクト開発がひと段落した」「業務がルーティンワークになってきた」「自分の能力を活かせる局面がなくなった」などの理由です。
エンジニアが自社事業から興味が薄れていると感じた場合、ワクワク感を育てる試みが必要です。事業戦略においてそのエンジニアがどんな役割を担っているのかを伝え、「あなたがいないと始まらない」というメッセージを伝え、モチベーションを高めてもらうことが大切です。
また、事業の現状を「市場」「競合」「自社」の立場から読み解く3C分析を実施し、定量的にエンジニアの重要性を伝えることも欠かせません。感情論を抜きにして、まだまだエンジニアが必要であることをロジカルに伝えましょう。
会社の将来が明るくないから
エンジニアに限った話ではありませんが、会社の将来に不安を抱いて転職する人もいます。
会社に対して不信感や不安を抱いてしまう場合、改善の糸口は経営者にあります。会社の顔ともいえる社長の能力が高く影響力の高い人物であれば、安定した事業の成長を経営者のビジョンに見出すことができるため、定着率改善に役立ちます。
「社長以上に社員が育つことはない」ということを踏まえた、経営者の発信力向上とポテンシャルのさらなる発揮が求められます。
エンジニア組織に必要な要素
上記のような課題を踏まえ、改めてエンジニア組織を作る上で必要な要素をまとめておきましょう。
十分な数のエンジニアマネージャー
まずは、十分な数のエンジニアマネージャーを揃えることです。エンジニア一人ひとりのニーズやパフォーマンスを正しく把握するためには、適切に管理できる質の高い管理者を複数人用意しなければなりません。
適切な業務管理とケアを提供できる環境を整備し、エンジニアの定着率を高めましょう。
組織への信頼感
事業が大きくなるにつれ、組織の意義やコンセプト、主力事業は見えづらくなってしまいがちです。組織への信頼や帰属意識が薄れると、事業への興味が薄れたり、給与や人間関係への不満も大きくなったりします。
そのため、エンジニア向けの啓蒙活動や、事業におけるエンジニアの役割を認識させる取り組みを継続的に実施することが必要です。
プロジェクトに対する主体性
エンジニア組織を支える力となるのが、エンジニア自身の主体性です。プロジェクトへ積極的に関わろうとするモチベーションがなければ、優れた製品の開発を進めることが難しくなります。
エンジニアの主体性を養うための第一歩として、現場のエンジニアの不満を解消してあげることが重要です。エンジニアが抱える不満は会社によって異なるため、エンジニア向けのヒアリングを実施し、解消すべき課題を明らかにしましょう。
エンジニア組織を内製化する際のポイント・注意点
自社の中で完結できる優れたエンジニア組織を内製化するためには、次の3つのポイントを押さえることが大切です。
開発費用を安く抑えるという「点」で考えない
1つ目のポイントは、コスト至上主義を脱却することです。開発費用を安く抑えるという「一点」を重視すると、上記のような課題が噴出し、エンジニア組織の育成に失敗します。
肝心なのは人件費の削減や事業規模の縮小ではなく、PDCAサイクルの高速化です。開発と実装、改善のサイクルを早め、高速でプロダクトを育てて普及することで、優れた成果を獲得しやすくなります。
PDCAサイクルを早める上で重要なのは、やはりエンジニアのモチベーションや主体性です。事業のビジョンに共感が持て、プロダクト開発へ本気で携わってくれるメンバーを獲得、あるいは育成することで、エンジニア組織開発が実現します。
外部・内部を交えた組織を構築する
2つ目のポイントは、外部・内部が交わるエンジニア組織を構築することです。エンジニア組織は必ずしも内製化にこだわる必要はなく、必要に応じて外部委託すること、内部で対応することを分担することで、優れた組織活動を実現できます。
業務を外部委託する場合、主に「請負型」と「SES派遣(準委任)型の」2種類が挙げられます。主な役割とメリット・デメリットは次のとおりです。
請負型
- 製品開発の納品まで責任を持って取り組む
- 予算管理がしやすい
- 発注者が請負業者の指揮をとることはできない
SES(準委任)型
- 運用・保守を含め、プロジェクトにおける部分的な業務委託を請け負う
- 仕様変更にも柔軟に対応できる
- 発注者が請負業者の指揮をとることはできない
- 結果を問わず報酬が発生する
それぞれの特性や、自社組織に不足している要素を把握し、併用することが大切です。
トップには開発会社の社長が務まる人物を配置する
エンジニア組織の内製化は、言い換えれば社内に開発会社を設置するということです。システム開発は、これまで日本企業はそれが専門領域ではない場合、外注に丸投げというケースも珍しくなく、ITでの実績やITリテラシーが本社で醸成されてこなかった企業も少なくありません。
エンジニア組織を内製化する上では、まずその会社のトップに立つ人間が開発会社出身の経営者、あるいはそれに等しいキャリアを持ったエンジニアへの理解に優れた人物である必要があります。
エンジニア組織を本格的に育成する場合、基本的なエンジニアリングの教育や評価制度の設置、採用活動、モチベーションコントロール、技術戦略に至るまで、多くの専門的なノウハウが求められます。
エンジニア組織の内製化に失敗する企業の多くは、技術力とマネジメント力を分けて考えてしまい、エンジニア組織に必要な要件を誤解したまま組織構築に臨んでいます。このような根本的な誤認識をもたらさないためにも、経営者の適正にも注意しなければなりません。
成功につながるエンジニア組織づくりのポイント
エンジニア組織づくりを成功に導く上では、上記の要件を満たした上で的確なポイントを押さえることが大切です。
他社の先進事例を積極的に取り込む
まず、エンジニア組織の内製化に成功している事例を積極的に取り込むことを意識しましょう。すでに成功しているケーススタディを徹底的に分析することで、必要な施策や解消すべき課題を新たに発見することができます。
成功事例を参考にしながら、自社独自の課題を解消すべく工夫を凝らすことで、確度の高い組織構築を実現できます。
権限移譲を徹底する
エンジニアの主体性を養う上では、権限の移譲にも大らかであるべきです。
トップダウンで言われた通りにシステムを開発するだけの労働力として見るのではなく、現場の声を反映しながら、優れたプロダクトへと仕上げられる環境を整備することで、生産効率の向上とともに、現場のモチベーション改善にもつながります。
1on1でエンジニアとの相互理解を育む
エンジニアのモチベーションを高い状態でキープし、主体的に事業へ関わってもらうためには、彼ら一人ひとりと向き合える環境づくりが大切です。十分な数のマネージャーを確保し定期的に面談を行うことで、現場の不満点や改善すべきポイントを共有できる仕組みを整備しましょう。
エンジニアが共感できるビジョンを共創する
一組織のメンバーとして所属している以上、エンジニアには常に会社やプロジェクトのビジョンを伝え続けることが大切です。
彼らにとって、一緒に成し遂げたいと思えるプランや展望を一方的に提示するのではなく、お互いの意見を汲み取りながら固めることで、メンバーの一人として責任を持って業務に取り組んでもらえます。
まとめ
エンジニア組織の内製化はまだまだ日本企業では進んでおらず、成功事例も多くはありません。しかし、抜本的なエンジニア主体の組織作りに一から取り組むことで、確実にエンジニアの定着率を高め、主体的にプロダクト開発に携われる企業へと生まれ変わることができます。
エンジニアに理解のある会社へと環境を整備し、一体となって共有するビジョンの実現に向けた活動ができる企業を実現しましょう。
当社グロースウェルでは、ベンチャー企業における最高技術責任者(CTO)として成長を支えてきた経験を持つ代表の大芝が、複数社の役員および経営・技術顧問を担当しています。ロジック(論理)とエモーション(感情)の両軸を持って組織課題の解決に携わり、持続可能な組織の成長を実現してきました。 エンジニア組織の内製化をご検討されていらっしゃる場合は、お気軽に当社グロースウェルまでご相談ください。